にきび 漢方薬 その二
コラム
ニキビでお困りのFさんが漢方相談
に来られました。
Fさんは33歳の女性で建設会社に勤務
しています。
身長は168cm、体重は58kgの筋肉質の体形です。
☆Fさんのニキビ
Fさんは学生の頃、ニキビはほとんど
ありませんでした。
建設会社に就職して3年ほど経ったころから、
ニキビが気になりだしました。
部位:口の周囲が特に目立ちます。
米粒大の大きさから、もう少し大きい面皰が
散在しています。
そして面皰は少し脂っぽい感じを受けます。
増悪因子:Fさんにどの様なときにニキビが
悪くなりますか?とお聞きしますと。
お酒を飲みすぎたり、油っこい物を食べ過ぎ
た後は、決まってニキビが酷くなるそうです。
学生の頃はお酒を飲む習慣はありませんでした。
しかし、就職してから仕事上飲む機会が増え、
プライベートでも飲む事が増えたようです。
☆Fさんの全身所見
Fさんは体力的のも自信があり、あまり
疲れる事を自覚しないそうです。
冷え性もなく、どちらかと言うと暑がり
の体質です。
大便は1日に1~2回で普通便からやや軟便
のことが多いそうです。
小便は1日に6~7回程度で普通です。
Fさんは自覚的にお困りの症状があります。
それは、いつも胃が重く胃の存在感が
ある事です。
当然、飲みすぎ食べ過ぎの翌朝は、胃の症状が
強く気になります。
大便も軟便~下痢になる事もあり、臭いも
気になります。
そこで、Fさんに舌を見せて頂きました。
漢方治療の診断の一つである舌診です。
まずは舌の形をみます。
少し浮腫んでいます。漢方では胖舌と呼びます。
次に舌の苔をみます。健康な方ですと、
うっすらと白い苔がつくか、苔はほとんどありません。
Fさんの舌の苔は、黄色でベターとしています。
漢方では黄膩苔と呼びます。
これは、病的な状態です。
次に舌の質の色をみます。これは、薄い紅~紅
の間の色で問題はありません。
☆Fさんの漢方治療
Fさんのニキビは、お酒の飲みすぎや
油っこい物の食べ過ぎにより、胃に湿熱の邪
が停滞した事によります。
それにより、胃が重く感じたり、胃の存在感が
あるのです。
今から1800年に書かれたとされる、
『傷寒論』『金匱要略』にその解決方法が
記されています。
『傷寒論』には、「若し心下満して硬痛する者は、
此れを結胸と為すなり。大陥胸湯之を主る。
但満して痛まざる者は、此れを痞となす。
半夏瀉心湯に宜し。」とあります。
Fさんの胃のもたれ感や胃の存在感が、
痞なのです。
『金匱要略』をみますと、「嘔して腸鳴り、
心下痞する者は、半夏瀉心湯之を主る。」
とあります。
同じような記載が見られます。
正しくFさんの胃症状は心下痞を指しています。
適応処方は、半夏瀉心湯になります。
☆漢方処方の服用と生活習慣の注意点
そこでFさんには、半夏瀉心湯と言う処方を
煎じて服用してもらうことにしました。
黄連という薬草が入っていまして、苦い薬草
です。ところがこの苦みがとてもスッキリ
するとFさんは話されました。
服用する方の体質と処方が合っている時は、
すんなりと飲めるものなのです。
反対に処方したものが、とても飲みにくい場合は、
体質に合っていないと考えて良いのです。
Fさんの体質には、半夏瀉心湯が合っていると
思われます。
但しFさんは半夏瀉心湯の服用だけでは、
根本的な解決にはなりません。
生活習慣の見直しが必要です。
まずお酒です。
ニキビの治療がすむまでは、
お酒を飲まないことです。
どうしても飲む場合は、ワインや日本酒のように
アルコール度数が12~14度と高いお酒は
避けてもらう事にしました。
また油っこい物は極力止めて頂きました。
そして、夜の9時以降はなるべく食べないように
注意してもらいました。
これらを守って頂くと、胃には負担がかからない
事になります。
漢方薬の服用と食生活の改善で、3週間もすると
舌の苔がとてもキレイになりました。
舌苔の改善により胃の症状も気にならなく
なると、口の周囲のニキビも改善して
いきました。
都合三ヶ月服用して頂き、ニキビの消失を
確認にて廃薬としました。
カンポウ コラージュ
漢方研究会 コラージュ
代官山 東京
戸田一成