ニキビの漢方治療:十味敗毒湯の疑問?
コラム
皮膚科や内科を受診して、
ニキビの相談をすると、
十味敗毒湯エキス製剤と抗菌剤を
処方される事が多いように思います。
それは、
T社のHPでニキビ・湿疹に対応する
漢方処方の中に、十味敗毒湯が
あるからでしょう。
そしてあまり効果があるように
感じません。
何故だろうか?
皆さんもそう思いませんか?
そもそも十味敗毒湯と言う方剤は、
何に効くのだろうか?
という疑問が湧いてきますよね。
☆十味敗毒湯
中国の古典の万病回春と言う書籍に
荊防敗毒散という方剤があります。
方剤の内容は…
羌活 独活 柴胡 前胡 桔梗 枳殻
川芎 茯苓 生姜 甘草 荊芥 防風
連翹 薄荷 金銀花
このような生薬で構成されています。
「主治」
「癰疽疔腫、発背乳癰等の症、憎寒壮熱
甚しき者、頭痛拘急、状傷寒に似て、
一、二日から四、五日に至る者を治す。
一、二剤にて即ちその毒衰える。
軽き者は内に自ら消散す。」
どのような内容なのかを説明します。
癰、疔、発背などは、皮膚化膿症や乳腺炎
を指し、このような病症に用いる方剤です。
そして症状が傷寒(風邪)に似て、
悪寒・発熱・脈が浮いていて、
頭痛や項部などのこりがある。
発病の1~2日から4~5日位でまだ
局所が充分に化膿していない時期に
用いる方剤なのです。
そして、十味敗毒湯はこの荊防敗毒散から、
前胡・薄荷・羌活・連翹・枳殻・金銀花を
除き、桜皮を加えたものです。
十味敗毒湯は荊防敗毒散を原方として、
処方の構成をシンプルにしたもので
ありますが、効能は同じと考えてよいでしょう。。
即ち十味敗毒湯は、
皮膚化膿症や乳腺炎の初期に用いる
方剤なのです。
にきびで言えば、でき初めのまだ化膿が
充分でない段階の時に服用する事によって、
でき初めのにきびが速やかに消失する
事ができるのです。
皮膚科を受診されて、
十味敗毒湯を処方された方は、
このタイミングで服用しているのだろうか?
甚だ疑問に思います。。
現実は、もっと慢性的に化膿が
繰り返している時に服用しているの
ではないでしょうか?
化膿の初期のタイミングがずれていたら、
効かないと思われます。。
では、なぜT社のニキビ治療マニュアルに
十味敗毒湯を推奨してあるのでしょうか?
それには理由があります。
昭和の時代、二大巨匠と言われた
漢方医に大塚敬節と矢数道明がいます。。
この2人が十味敗毒湯について、
化膿の初期だけでなく、化膿しやすい
体質改善にも効果があると発言した
からなのです。
ところが今令和の時代になり、
慢性的に化膿を繰り返すニキビに
体質改善の目的で服用しても、
効果は限定的であると言えます。。
漢方コラージュ代官山に
おいての症例になるのですが、
もし化膿しやすい体質改善に
十味敗毒湯が効いたとしても、
当方の患者さん達にはあまり
効果があるようには思えません。。
なぜか?
漢方コラージュ代官山に来られる
ニキビに方のほとんどは、
10代後半から40代の女性だからです。
ほとんどの方がニキビと月経の問題が
絡んでいるからです。
単純に化膿しやすい体質ではないのです。
例えば、月経前になるとイライラが強くなり
乳房も張ってきて、ニキビも増悪する。
または瘀血の存在があって、
唇・舌・皮膚・月経においても瘀血の所見があり、
ニキビそのものも瘀血色をしていれば、
瘀血からニキビを考える必要があります。
このように女性のニキビは、
女性病としての位置ずけとして、
治療する必要があります。
昭和の時代、体育会系の男子が
ゴツゴツしたニキビをよく作って
ました。
この男子ニキビと女性ニキビは、
別物なのです。
漢方コラージュ代官山
漢方研究会 コラージ
戸田一成
代官山 東京