むくみ、手指痺れ、腰痛でお困りのLさん。
コラム
五月の連休明けに、なとなく身体の調子が悪いと
漢方相談にLさんが来られました。
Lさんは70歳の女性で、身長156cm・体重63kg
の方です。
既往歴として18歳の時に甲状腺機能亢進症
の診断を受けていて、28歳の時に甲状腺を
全摘しています。その後はチラージンの服用を
続けています。後は血圧が高めであることから、
降圧剤を服用しています。
さっそくLさんに、どのように体調が悪いのか?
お聞きしました。
まず、朝起きた時に顔が浮腫んでいる。
そして手指も浮腫んで指輪が入りづらい。
昼頃から足首から脛にかけて浮腫んでくる。
足が浮腫んでくると、重だるくなりだるい。
これらの症状は2年前より気になりだした。
その頃より、手指の浮腫みがあるとジンジンと
痺れるようになった。
内科や整形外科を受診したが、特に異常は
ないとの事であった。
そして、普段は車生活で歩くことがほとんどない。
半年前に旅行に行って普段歩かないのに、過度に
歩きすぎてから腰痛に悩まされている。
この腰痛も整形外科を受診したが、原因は
分からないとの事。
Lさんに雨が降ると症状は悪化しますか?
とお聞きすると、変わらないとの事です。
Lさんは気象病ではありません。
一年の中でどの季節が症状の増悪を招くか、
お聞きしました。
冬の寒い日や梅雨、そして台風も良くない
との事です。
では、どのような時に症状が楽になる事が
あるのか?
お聞きしました。
温泉に行ってゆっくり湯船に浸かると楽に
なるそうです。
☆Lさんの症状を漢方的に考える
まず、お困りのの浮腫みについて。
顔・手指・下肢が浮腫みます。
これは、体内の水はけの悪さを意味します。
そして、手指が浮腫むようになってから、
手指がジンジンと感じるようになって、
来てますからこの症状も水はけの悪さと
関係していると思われます。
内科での検査を受けてますので、
原発となる疾患の可能性は低いです。
そこで、日常の生活を見てみましょう。
「日常は車生活で歩く事はほとんどない」
との事です。
このような生活スタイルの女性は、
Lさんのように浮腫みが現れる事が、
多く見られます。
そこで、歩かないことと浮腫みの関係です。
人体の下肢は、70%の筋肉が集まっている事。
そして、筋肉はポンプの役割をしている。
筋肉ポンプの役割は二つ。
一つは、熱生産これは体温の維持。
または、冷え性の防止としての役割。
もう一つは、体液を体内に循環させる
ポンプの役割。水はけを良くする。
もうお分かりと思いますが、ポンプの
働きが悪かったり、ポンプが小さかったり
しますと体液の循環が悪くなり、浮腫みます。
そこで筋肉ポンプの働きを良くする漢方薬と
水はけを良くする漢方薬を配合する事に
よって浮腫みは軽減していきます。
そして漢方薬の服用だけでなく、日常の生活の
中で筋肉を刺激して筋力アップを行うことが
重要なのです。具体的には後程お話します。
Lさんのお困りのもう一つは、腰痛です。
やはりこの腰痛も普段の生活の中で、車を
使うことが影響していると思われます。
車を使うこと自体腰に負担がかかります。
そしてなにより、歩くことが少ないため、
筋力が落ちているのです。
腰痛に対しても筋力アップは必要です。
Lさんは腰痛について、温泉などで温めると
楽になるとおっしゃっています。
ですから漢方薬を使って、腰の周りの筋肉を
温泉に入っているように温めて上げれば
良いのです。
☆Lさんの日常の生活の改善点
車主体の生活からの脱却です。
とにかく歩くことが大切。
具体的なメニューとして、額が汗ばむ程度
の心拍数で20分のウオーキング。
ここからスタートして、無理のない範囲で
40分まで増やしていく。
雨の日などは、ウオーキングはできないので、
自宅でスクワットをしてもらう事にしました。
漢方処方としては、筋肉ポンプの働きを
良くする、そして水はけを良くする配合。
さらに、腰痛に対して湯船に入っている
状態を作る、温める漢方薬を組み込んで
処方を作りました。
4週間の服用で諸症状は半減しました。
8週間を服用した頃には、ほぼ症状は
消失したため服用を中止して様子を
見ています。
但し、ウオーキングやスクワットを
日常の生活に取り入れていく必要は
あります。
カンポウ コラージュ
漢方研究会 コラージュ
代官山 東京
戸田一成