コラム

漢方コラージュ代官山:雨の頭痛は水の偏在が原因:気象病

コラム

雨の降る前に頭痛になる方が

いらっしゃいます。

その多くは女性です。

気圧が下がり湿度が上昇し、雨が降ります。

特徴は、雨の降る前に痛む事です。

このような条件で、頭痛の他に目まいや浮腫みが

起こる疾患が気象病です。

東京に住まわれてる方ですと、低気圧が

九州~四国~紀伊半島を通過する頃、

頭痛になります。

そして、雨が降りだす頃には頭痛は

消失します。

漢方で考える雨の日頭痛は、

まず気圧が下がる事により、

気の流れに異常が起こります。

気圧が高いときは、対外から体内に

圧力がかかります。

気圧が下がりますと反対に、体内から

体外に向けて力が働きます。

気象病と気圧は密接に関係します。

もっとも分かりやすいのが、雨の日の

浮腫みです。気圧が下がり体内の水が

体表に向かって行き浮腫むのです。

雨の日の頭痛も同じ原理なのです。

気圧が下がり体内の水が頭内に向けて

上昇することによって頭痛となるのです。

これはあくまでも漢方の考え方です。

身体の70%は水でできています。

気圧や湿度の変化で体内の水が

偏在を起こしてしまうのです。

気象病において、先ほどの気圧と

体内の70%を占める水が、最も

大きな要因になります。

漢方で考える水の偏在とは、

痰飲という病理産物の存在と考えています。

日常の臨床で良くみることができるのは、

雨の降る前に浮腫みます。

そして、翌日天気が回復すると、

浮腫みも解消されます。

気圧が下がり症状が発生し、天気が回復して

気圧が戻ると何事もなかったかのように、

症状が消失するのが気象病の特徴です。

ところが浮腫んだ水が体外に出たわけでは、

ないのです。

何故か?いつもと小便の量に変化が

無いからなのです。

これが、水の偏在なのです。

雨の降る前に浮腫んだ水は、

翌日体外に出たのではなく、

体内に戻ったのです。

この関係を説明するのに痰飲と言う

概念が必要になるのです。

痰とは、水が凝縮されたゼリー状の

ような物と考えてください。

そして飲とは、さらさらの水に

なります。

浮腫みの水は、飲になります。

雨の降る前に浮腫みは飲です。

この飲が天気が回復して気圧が

高くなると、ゼリー状の痰に

戻っていくのです。

このような関係を、漢方では

痰飲と言います。

気象病における漢方治療において、

痰飲と言う概念は必要不可欠な事です。

雨の降る前の頭痛や浮腫みを

改善するには、

この痰飲の量を減らすことなのです。

そこで必要な薬物は、

蒼朮・茯苓・沢瀉になります。

気圧が下がり気の流れに

異常がおこります。

ここは、桂枝・甘草と言う薬物が

対応します。

処方では、茯苓沢瀉湯が適応になります。

そして、この茯苓沢瀉湯の配合に近い

処方に五苓散があります。

気象病について書かれたブログなどを

みますと、気象病の頭痛に五苓散が有効と

書かれている事が良くあります。

五苓散は今から1800年前に書かれた

『傷寒論』と言う書籍が出典になります。

そこには、五苓散を用いる時に条件が

つけられているのです。

それは、「口渴と小便不利」です。

口がカラカラに乾いて、そして小便が出ていない。

このような体内での水の偏在があるときに、

五苓散の適応になるのです。

実際の臨床において、気象病の片頭痛の

患者さんで、このような「口渴と小便不利」

を伴う症例は稀にしかありません。

多くの気象病を伴う片頭痛の方は、口の渇き

と小便が出ていない症状を伴うことは、まず

ありません。

ですから気象病に伴う片頭痛のファーストチョイス

となる処方は、茯苓沢瀉湯が適当になります。

 

このようにして、気の流れの異常と

水の偏在を是正することによって、

気象病で困る雨の降る前の頭痛や

浮腫みから解放されるのです。

 

漢方コラージュ

漢方研究会コラージュ

代官山 東京

 

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