コラム

漢方コラージュ代官山:雨の日頭痛と排卵日・生理前の頭痛:漢方でどう考える?

コラム

38歳の主婦のJさんが漢方相談に

来られました。

Jさんの最も困る事は、天気が崩れると

頭痛になる事です。

低気圧が四国~紀伊半島に近づくと

頭痛のスイッチが入ります。

気圧が下がり、湿度が上昇する変化

に感じてしまう体質です。

Jさんは女性に多い気象病です。

 

次に困るのは、排卵日の頭痛と

生理前の頭痛です。

この頭痛は、気象病である天気の崩れ

とは関係ありません。

 

さて、このような頭痛が混在している

場合は、どのように治療するので

しょうか?

研究会で専門家の集まりですと、

同一方向性の病理の場合は、

一括で処理して良い。

同一方向性でない病理が複数ある場合は、

段階を踏んだ方が良い。

このような法則を話します。

噛み砕いてお話しますと、

今東京駅にいたとします。

携帯電話が鳴って、名古屋と大阪に

用事が出来たとします。

新幹線では、名古屋と大阪は

同一方向ですので、名古屋で用事を

すませて、大阪に行くことができます。

二つの用事が一括で処理できたことに

なります。

ところが、東京駅にいて、名古屋と仙台に

用事ができたとします。

名古屋と仙台は、同一方向では

ありません。

そこで名古屋で用事を済ませて、

一旦東京に戻ってから、仙台に行く

事になります。

段階を踏んだわけです。

Jさんの症例は、気象病である頭痛と

排卵日と生理前と言う女性特有の

症状であるため、段階を踏んで治療

する必要があるのです。

 

そこでまず、気象病の頭痛から

アプローチしました。

気圧が下がり湿度が上昇して

頭痛のスイッチが入るます。

気圧の低下は、気の流れに異常が生じ

ておこります。

この気の流れの異常を漢方では、

「上衝」と呼んでいます。

上に昇る陽気が不足した状態です。

西洋医学で考えると、脳貧血です。

女性に多く少し長く立っていると、

目の前が暗くなってしゃがみ込んで

しまう方がいますね。

血圧のプレッシャーが一時的に下がって

脳内の血液が不足します。

これを漢方では、上に昇る陽気の不足と

考えて、「上衝」と言う言葉で表現して

います。

漢方で考える「上衝」と言う病理も、

気象病と密接に関係します。

この「上衝」を改善するのが、

桂枝甘草湯と言う処方です。

この処方は今から1800年前に書かれた

『傷寒論』と言う書籍が出典です。

『注解傷寒論』の64条に

「汗を発すること過多、その人手を組みて

自ずから心を冒い、心下悸し、按を得んと

欲する者は、桂枝甘草湯之を主る。」

とあります。

この条文の内容は、発汗が度を過ごした

ために、上に昇る陽気が不足して、

上衝が起こり心悸亢進となった。

そこで両手を心胸部で組んで、

動悸を鎮めようとする者は、

桂枝甘草湯の主治であると。

ここの心胸部の動悸を、頭痛に置き

換えて応用したものが、気象病に

伴う片頭痛なのです。

そして、気圧が下がり気の流れに異常が

おこり上衝となり、そこを桂枝甘草湯で

対応します。そして、気圧の低下の後に

湿度が上昇します。

ここで起こる事が水の偏在です。

気圧が下がりますと、体内の水は

外に上にと向かいます。

頭内に向かい頭内が浮腫みますと、

頭痛になります。翌日天気が回復して

気圧が上がりますと、頭内に溢れた水は

下がっていき頭内の浮腫みは解消されて

頭痛が消失するという流れになります。

この頭内に溢れた水を解消するのが、

蒼朮・茯苓と言う薬物です。

先ほどの桂枝甘草湯にこの蒼朮・茯苓を

合わせたものが、苓桂朮甘湯と言う処方

になります。

この苓桂朮甘湯にさらに水はけを良く

する意味で沢瀉と生姜を加えた処方が

茯苓沢瀉湯になります。

気象病には、苓桂朮甘湯や茯苓沢瀉湯が

適応となる事が多いです。

Jさんには、茯苓沢瀉湯を服用して

頂きました。

二週間分づつ様子を見ながら服用して

もらい、六週間を服用した頃から、

天気が崩れても頭痛は起こらなく

なりました。

 

次に排卵日と生理前の頭痛の治療に

入る事になります。

Jさんには、このような特徴があります。

排卵日と生理前は、とてもイライラして

短気になります。

さらに生理前は、吹き出物や下腹部痛や

風邪症状がでます。

Jさんは、月経前症候群(PMS)です。

漢方の考え方ですと、気の流れの一つ

「疏泄」が失調した状態なのです。

そこで「疏泄」という気の流れを良く

するために、柴胡+芍薬のコンビを

使います。生理前のイライラには、

とても良く効いいてくれます。

そして、排卵日や生理時の諸症状

には、当帰+芍薬のコンビがとても

良く反応してくれます。

柴胡+芍薬+当帰がメインの処方で

ある逍遙散をJさんには服用して

頂く事にしました。

三ヶ月を服用した頃より、イライラや

吹き出物と下腹部痛が軽減してくると、

頭痛も起こらなくなってきました。

 

気象病の頭痛と排卵日と生理前の頭痛は、

別の要因より起こっていたのです。

一括で治そうとするのではなく、

段階を踏んで治療した事により、

Jさんは頭痛から解放されたのです。

 

漢方 コラージュ 代官山

漢方研究会 コラージュ

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