自律神経失調の漢方:疲れ・だるい ・朝起きれない:漢方コラージュ代官山
コラム
☆現代医学からみた自律神経失調症
自律神経とは、カラダのさまざまな機能を
無意識のうちに自動的に働いている神経です。
呼吸・脈拍・胃腸の動きや消化・汗による
体温調節・免疫などなどは、無意識のうちに
調整されています。
自律神経失調症とは、特定の疾患名ではなく、
交感神経(日中に活発になるアクセル)と
副交感神経(夜間のように安静時の活発になるブレーキ)
の二つのバランスが崩れた状態を意味する用語です。
自律神経が乱れる要因としては、
学校や会社での精神的ストレスや、
職場や環境における気温・湿度などの身体ストレス
があります。
また、生活習慣の乱れや更年期障害による
女性ホルモンの減少が自律神経に影響を
与えます。
症状としては、疲れ・だるさ・めまい・冷えのぼせ
・下痢・便秘・動悸・喉のつまり感などなどが
あります。
治療としては、自律神経調整薬・安定剤・睡眠薬
などが対象療法として用いられます。
☆漢方からみた自律神経失調症
自律神経の乱れの症状と漢方治療は相性が良いと
言えます。
病院などで自律神経失調症と診断された方に
漢方を処方してみると、良い結果が得られる
からです。
但しここで重要な事があります。
現代医学からみた自律神経の乱を、
漢方の考え方に置き換えるという
作業が必要なのです。
自律神経失調症だから決まった
漢方処方があるわけではないのです。
自律神経の乱を漢方的に考えるには、
以下の三つの漢方としての考え方が
基本になります。
①身体における陰陽
自然界においては、太陽が昇って
太陽が沈むまでの日中が陽になります。
太陽が沈んで夜の闇が訪れ夜明けまでが
陰になります。
朝目が覚めて活動するエネルギーが陽です。
この陽は現代医学で考える交感神経に相当
します。
夜になって気持ちもゆったりとして
眠りにつく状況が陰になります。
この陰が現代医学でいう副交感神経に
相当します。
活動エネルギーとしての陽と、
ゆったりと眠りにつく陰とが
バランス良く保たれていれば
自律神経も安定していると言えます。
ここでの陰陽の過不足が起こりますと、
体調不良となりますので、
陰陽を整える処方として、桂枝湯が適応に
なります。
そして、この陰陽のアンバランスの違いにより
桂枝湯にさまざまな加減をして実際には用いる
のです。
②身体における気・血・水の流れ
漢方で考える身体の生理的な流れは
三つあります。
この生理的な三つの流れも、
自律神経の働きに大きく影響を
及ぼします。
・気の流れ
気の流れが不足しますと、自律神経が乱れ
やすくなり、疲れやだるさの原因になります。
そこで気を補う漢方処方である補中益気湯や
黄耆建中湯などを処方して対応します。
・血の流れ
血は身体にとって栄養素になります。
そこで血が不足しますと栄養がいきわたらなく
なり、やはり自律神経の乱につながります。
肌が乾燥したり、髪の毛がパサついてきます。
そこで用いる処方は、十全大補湯や人参養栄湯が
適応となります。
また、血の流れが滞ってしますと、漢方で考える
瘀血という病理になってしまいます。
瘀血の発生も自律神経に影響を及ぼします。
瘀血を解消するために桂枝茯苓丸・
桃核承気湯・通導散などを処方します。
・水の流れ
水の流れが滞りますと浮腫みが発生します。
過剰な水の停滞は、自律神経に負担をかけます。
そこで水の巡りを良くする五苓散・茯苓沢瀉湯
・当帰芍薬散などを処方します。
自律神経の働きを正常に保つには、
どの流れもスムーズに流れる必要があります。
③身体における五臓六腑の働き
自律神経失調症を漢方的に考えるにあたって、
五臓六腑では「肝」がとても重要になります。
漢方で考える「肝」の生理的な働きとして
「疏泄(そせつ)」があります。
この働きは身体の気がスムーズに巡るように
コントロールする事です。
ひとたび気の流れが停滞しますと、
クルマで渋滞が起こるように、
気の流れも渋滞してしまいます。
渋滞に巻き込まれますとイライラするように、
気の流れも停滞しますと、怒りやすくなったり、
イライラしてしまいます。
このようなメンタルの状態は、
自律神経を乱してしいます。
自律神経失調症の原因になるのです。
そこで、疏泄の失調により気の停滞が起こるので
気の流れを良くする必要があります。
そこで用いる処方は、
四逆散・柴胡疏肝散・大柴胡湯などになります。
このように自律神経失調症は、
漢方の考え方に置き換えて、
今何が問題なのかを見える化して
治療にあたる事がポイントになります。
それでは実際の症例を見ていきましょう。
①陰陽のバランスが乱れた症例
女性 36歳 身長158cm 体重47kg
会社の部署が変わって、新たな人間関係について
悩むようになってから、体調が悪くなってきました。
食欲もあまり無く、体重も3kgほど減少しました。
体重が減るとともに身体の冷えを感じるように
なりました。
夜の眠りも浅くなり、朝起きてもボートしてしまいます。
そして、夜中に動悸を感じるようになったのです。
内科を受診して検査をしましたが、異常はないとの事です。
対人ストレスより食欲が無くなり、体重も減少すると
同時に冷えを感じるようになります。
これは、活動するエネルギーである「陽」が損傷を
受けた事を意味します。
また、ストレスにより眠りが浅くなり夜間に動悸を
感じるのは、「陰」がダメージを受けたことに
なります。
そこで、陰陽を補いながら動悸を鎮静させる事を
目的として、桂枝加竜骨牡蛎湯を服用して頂きました。
2週間ほどの服用で夜間の動悸はほぼ消失しました。
その後も継続して服用する事によって、食欲も戻り
冷えも解消されました。
ストレスから自律神経が乱れ、漢方で考える陰陽が
消耗した事による、体調不良だったのです。
的確な処方の投与により、速やかに改善されて
症例になります。
②漢方で考える「血」が不足した症例
女性 38歳 身長152cm 体重49kg
会社に勤めながら資格をとるために、
夜間に専門学校に通っています。
仕事と勉強の両立は、心身ともにストレスを
感じてしまいます。
半年した頃より、目の疲れが気になるように
なりました。
その頃から抜け毛も目立つようになりました。
これは、仕事と勉強のストレスにより、
自律神経が失調して、漢方で考える「血」が
不足した事が原因です。
そこで、当帰建中湯の服用により、「血」が
補われることによって、目の疲れや抜け毛が
改善された症例です。
③漢方で考える「肝」の働きが失調した症例
女性 48歳 161cm 53kg
半年前頃より、生理の周期が乱れ初めました。
同時に生理前になるとイライラが気になり
だしました。少しの事でも怒りやすくなったと
自分でも気づくほどです。
そして、時々急にのぼせるようにもなりました。
このような症状は、加齢に伴う女性ホルモンの
減少に伴い、自律神経の働きが乱れて起こる
更年期障害です。
漢方で考える「肝」の疏泄の働きが乱れた事に
よるものです。
そこで、「肝」の疏泄の働きをスムーズに
するために、加味逍遙散を服用して頂きました。
三か月ほどの服用で、イライラや怒りやすいと
いうメンタルの症状は落ち着いています。
自律神経失調症という病名の症状は、
かなり広い範囲に及びます。
発症の原因から漢方で考える病態を
的確に把握して、治療にあたる事が
とても大切なことなのです。
漢方コラージュ代官山
漢方研究会 コラージュ
戸田一成
代官山 東京