研究会

「五千銭を帯びるが如し」の呪縛 PartⅠ 

研究会

漢方薬局を開業して6年目となる

Fくんから質問を頂きました。

苓姜朮甘湯の使い方が分からない?

Fくん曰く、

まず出典を確認してみます。

『金匱要略・五臓風寒積聚病編』

「腎著之病 其人身体重 腰中冷

如坐水中 形如水状 反不渇

小便自利 飲食如故 病属下焦

身労汗出 衣裏冷湿 久久得之

腰以下冷痛 腰重如帯五千銭

苓姜朮甘湯主之」とある。

Fくんは、医方集解をはじめ後世の

方剤書にも当たり勉強をして来ました。

これは。「昭和時代の方剤の学習方法」

なのです。

様々な古典から苓姜朮甘湯の記載を

列挙して、それに準ずる。

 

腰部または腰以下に冷感を覚え、

「水中に坐するが如く、五千銭を帯びるが

如し」という表現。

結局はどの方剤書もこの記述に帰納する。

 

Fくんは、実際の漢方相談でこのような

患者さんが来るのは極めて稀とのこと。

正しく「五千銭の帯びるが如し」の

呪縛にハマったのである。

これはFくんだけでなく、多くの方々も

この呪縛から逃れられないように思う。

 

方剤の学習方法として、古典を列挙する

「連続的学習方法」に終始して、

「思考の積み重ね」が無い、

この点が最大の問題点なのである。

Fくんもこのような講習会に参加していた

ようだ。

 

この「連続的学習方法」が、

思考がジャンプすることの

妨げになっているのである。

 

もう少し分かりやすい具体的な事例

でみていきたい。

 

☆消化器外科

昭和の時代、胃の検査はBa透視。

そしてガンが発見されれば、開腹して

胃を切除して腹部を縫合して終わる。

この一連の流れが「連続的学習方法」。

この流れを習得すれば、医局で一人前と

評価される。

 

ところが「思考のジャンプ」が起こる。

今までの一連の「連続的学習方法」を

根底から覆す事が起こる。

 

☆内視鏡の出現

 

胃の検査はBa透視が常識とされて

いた。

そこに、胃を直接見ようと言う発想。

更に胃の中を直接見て、早期胃がんが

あれば摘出しようという発想。

そしてその発想が現実になる。

 

昭和の時代 胃の検査Ba検査→開復手術。

この「連続的学習方法」が、内視鏡の出現

即ち「非連続的思考」が新たな価値を

生み出したことになる。

 

但し今度は、内視鏡検査→早期胃がんにおいて

内視鏡による粘膜下切除術が行われ、

拡大した胃がんにおいては、

開腹し胃の切除術が行われる。

ここでの新たな「連続的学習方法」が生まれる。

この連続した流れを習得すれば、消化器外科医

として一人前と評価される。

ところが、ここでまた「思考のジャンプ

が起こる。

 

☆腹腔鏡の出現

 

早期胃がんに対して内視鏡下手術。

そして拡大した胃がんに対しては、

開腹していたものが、開腹せずに

腹腔鏡下手術によって開腹しない

で済む。これは患者さんにとって

メリットは大きい。

「思考のジャンプ」でうまれた、

腹腔鏡下手術という「非連続的思考」

新たな価値を生み出したのである。

 

実は漢方の世界でも、

連続的思考→非連続的思考

このように、「非連続的な成長を促し

新たな価値を生み出す多面的な思考法

が今求められているのである。

 

そして、苓姜朮甘湯の使い方について

Fくんの学習方法は「連続的」だった

のである。

そこに、「非連続的」な成長を促す

トレーニングを取り入れることに

よって、Fくんの疑問は解消される

のである。

 

さらに、『五千銭が帯びるが如し』

PartⅡに続く

 

漢方研究会 コラージュ

漢方コラージュ代官山

戸田一成

代官山 東京

Kampo lab collage(漢方研究会)

 

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