コラム

雨の降る前に喘息、気象病との関係。

コラム

58歳の主婦のKさんが漢方相談に

来られました。

Kさんは、雨が降る前になると、

息を吐きだし難くなり、ゼロゼロと

喘鳴を伴い苦しくなります。

さらに、胸が痛くなる事もあります。

今までは近くの内科を受診して、

気管を広げる薬やステロイドを使用して

いました。

Kさん雨が降り出す前に起きる喘息症状

も気象病なのです。

ところが眼科の検診で緑内障と診断

されました。

ここで困った事になります。

緑内障には、気管支拡張剤やステロイドは

服用禁忌の薬物になります。

そこで、漢方でなんとかして

欲しいとの事です。

Kさんは、身長158cm・体重54kgで

少しぽっちゃりした印象を受けます。

普段から足首や手の指そして瞼などが

浮腫みやすいようです。

気圧が下がり雨の前はより顕著に

なります。

浮腫みが目立つ時は、小便の量が少なく

なり、身体がだるくなります。

何をするにも、よっこいしょになります。

舌を診ますと、舌も浮腫んで胖大です。

Kさんの気象病による喘息は、浮腫みも

原因の一つなのです。

そして、腰や足首から先が冷えます。

冷えを強く感じるときなどは、

下痢になる事もあります。

今から1800年ほど前に書かれた

『傷寒論』という書籍をみますと、

Kさんにピッタリ当てはまる条文が

あります。

「少陰病、二三日已まず、四五日に至り、

腹痛し、小便不利し、四肢沈重疼痛し、

自ずから下痢する者は、此れ水気有となす、

其の人或いは咳し、或いは小便利し、

或いは下痢し、或いは嘔者する者は、

真武之を主る。」

「少陰病」とは、新陳代謝が落ちて疲れやすく

身体も冷えやすい状態を指します。

そこで、「小便不利~有水気~咳」より、

小便の出が良くなくて冷えやすく、

体内に水が過剰にあって浮腫みやすい方

の咳(喘息)に真武湯が良いですよと

書かれています。

Kさんは、元々体内に過剰な水があり

そのため冷えやすく、天気が崩れ

気圧が下がり始めると、気の流れに

異常がおこり、過剰な水が気管に

溢れ出てきて喘息症状が起きるのです。

そこで、代謝を上げて冷えを改善しながら、

過剰な水を出して気象病を改善するのに、

真武湯がピッタリ当てはまります。

先ほどの『傷寒論』の真武湯の条文に、

次のような注があります。

「若し咳(喘息)が伴う方には、

五味子・細辛・乾姜を加えなさいと。」

そこでKさんには、真武湯の組成である

茯苓・朮・芍薬・附子・生姜に、

五味子・細辛・乾姜を加味して

処方しました。

ここでの生姜は、スーパーの野菜売り場で

売っている生姜を薄くスライスして

3~5切れほど煎じるときに入れて

もらいます。

乾姜とは、生姜を乾燥させたもので、

身体を温める作用が強くなります。

Kさんの場合は、生姜も乾姜も両方

入れることになります。

この真武湯加減の処方を4週間ほど

服用した頃より、身体が温まるようになり、

そして浮腫まなくなってきました。

浮腫みの軽減とともに、雨の前の

喘息症状である気象病も軽減しました。

都合三ヶ月服用して、ほぼ雨の前の喘息

は起こらなくなりました。

ここで大切な事があります。

今回は、真武湯加五味子・細辛・乾姜の

服用で、代謝が上がり冷えも改善され、

過剰な水分が排出されました。

漢方薬の服用を中止して、しばらく

日にちが立ちますと、徐々に代謝が

落ちて冷えやすく、そして体内の水はけ

も悪くなってきます。

そうしますと、雨の日前の喘息が

起こりやすくなってしまいます。

そこで大切な事は、日常の生活の中に

運動を取り入れる事です。

特別にスポーツジムに通うとか、

スイミングスクールに入るとかの必要は

ありません。

ポイントは日常の生活の中でできる運動が

一番長続きするからです。

運動ですが、特に下半身の強化です。

人間の筋肉の多くは下半身に集まっています。

そこで筋肉を鍛えるメリットは、筋肉量が

少しでも増えますと、代謝が良くなり

熱量が増えます。すなわち冷えが改善

されます。

筋肉はエンジンでもあり、ポンプの役割も

あります。筋肉量が増えますと、代謝が

上がり冷えの改善の他に、ポンプの働き

もあることから、水はけが良くなります。

浮腫みも改善していきます。

気象病の治療において、筋肉量が増える

ことは、とても大切な事なのです。

そこでKさんには、一回に20分の

ウオーキングを週三回お願いしました。

慣れて来ましたら、ウオーキングの時間を

20分→30分→40分と、無理のない範囲で

伸ばして行くようにお話しました。

雨の日や真夏などは、ウオーキングが

できないこともあります。

その時は、自宅でもどこでもできる、

ストレッチを進めました。

ストレッチトレーニングを効果的に

行うのには、回数ではなく限りなく

ゆっくり行う事です。

ゆっくりと腰を落として行き、

そしてゆっくりと上げていきます。

このゆっくりが筋肉には、非常に

効果的に効きます。

限りなくゆっくりのストレッチを

最初は30秒で十分です。

慣れてきましたら、1分そして1分半と

伸ばして行くと効果的です。

このようにして、下半身の筋肉を強化

する事によって、漢方薬の服用を中止

しても、雨の日前の喘息が再発する

可能性はとても低くなり、気象病から

解放されます。

 

漢方コラージュ代官山

漢方研究会 コラージュ

代官山 東京

気象病

 

 

 

 

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