コラム

漢方コラージュ代官山:気象病 雨の日の痛みとむくみ

コラム

気圧が下がり雨が降り出す前頃、

左腕がむくみ更に痛みとしびれに

悩んでいる気象病の Iさんが漢方相談

に来られました。

整形外科では、頸椎脊柱管狭窄症と

診断されています。

Iさんは、48歳の女性で金融機関で

働いています。

雨が降り出す前が調子が悪く、

雨が降ってしまうと落ち着きます。

気圧が台風などでとても低くなると、

まず左腕が丸太のようにむくみます。

首から肩そして腕から手指にかけて

痛みとしびれがきます。

典型的な気象病です。

ロキソニンを服用しても効きません。

気圧が下がるとむくみ、翌日気圧が戻ると

むくみが解消されます。

むくみとなってから消失するまで、

小便の回数・量などはいつもと

変わらないようです。

では、この腕のむくみの水は

どこに行ったのか?

このような現象が漢方で考える

水の偏在なのです。

気象病の症状を軽減するにあたり、

この水の偏在の解消がとても

重要になります。

そこで漢方では、水が偏在した病理的

ものを「痰飲」と呼んでいます。

「痰」とは粘稠なゼリー状をイメージ

してください。

「飲」はさらさらの水です。

そして「痰」のゼリー状と

「飲」のさらさらの水は相互に

行き来しているのです。

ここに、気圧が関係しているのです。

気圧が下がりますと、気の流れに

異常がおこります。

そして、体内の70%を占める水は

外に外に向かいます。

気圧が下がり気の流れに異常が

おこり、ゼリー状の水の「痰」と

さらさらの水の「飲」が外に向かいます。

結果、浮腫んできます。

このように漢方で考える痰飲と言う病理も、

気象病と密接に関係します。

Iさんは台風が来ると左腕が丸太

のように浮腫んでしまう理屈は

このような事だったのです。

そこで、Iさんはどのように治療

して行けばよいか?

今から1800年前に書かれたとされる、

『金匱要略』と言う本を見てみましょう。

『金匱要略』痙湿暍病篇に次のような

記載があります。

「傷寒八九日、風湿相搏、身体疼煩、

不能自転側、不嘔、不渇、脈浮虚而

濇者、桂枝附子湯主之。」

この条文の内容は、「風湿相搏」

とあり気圧が下がり湿度が上昇した

事を言っています。そして、

「身体疼煩」とは、身体が痛くなった。

そこで、桂枝附子湯を使いなさいと。

Iさんの気圧が下がって雨の降りだす

前の痛みには、この桂枝附子湯が

適応なのです。

1800年前に書かれた書籍でも、

現代の気象病に応用ができるのです。

そして、Iさんは痛みだけではなく、

浮腫みを伴います。

これは先ほど説明した水の偏在

である、「痰飲」が関係しているのです。

そこで「痰飲」を解消して行く必要が

あります。

「痰飲」を解消する薬物が、

蒼朮・茯苓・沢瀉になります。

そこでIさんには、

桂枝附子湯+蒼朮・茯苓・沢瀉

を配合した処方を服用して

頂く事にしました。

ここで一つ注意点があります。

水の偏在である「痰飲」なのですが、

筋肉量と深い関係があることが

分かってきました。

筋肉には血液も豊富にありますが、

水も筋肉には多く存在しているのです。

分かりやすい話では、夏の暑い日に

脱水症状を起こす方がいます。

救命救急医は脱水症状の患者さんが

運ばれてきますと、まず筋肉量を

診るそうです。

筋肉量が少ない高齢の方や小児は、

水の保水量が少ないので、脱水症状

を起こしやすいのです。

そこで運動をして筋肉量がを増やす

事により、正常な水が増えて、

病理的な「痰飲」の量が減る事が

分かってきました。

気象病との治療において、漢方薬の

服用だけでなく、筋肉量を増やす事が

とても効果的なのです。

そこでIさんには、生活習慣の中に

運動を取り入れてもらう事が

とても重要な事になります。

一般的に運動してくだいねと

お願いしても、そう簡単にはして

もらえません。

そこで具体的な運動メニューを

提案しました。

月曜日から金曜日までは会社勤務

になります。では、土日を利用して

ジムに通えるかというと、なかなか

続かない方が多いです。

そこで二つの提案をしました。

一つは有酸素運動のウオーキング。

週三回ほど帰りに一駅前に電車を

降りて、30分歩いて帰る。

もう一つは、ストレッチ。

場所を選ばずどこでもできます。

そして筋トレとしての効果が高い。

具体的な方法として、回数を多くする

のでは無く、一回を限りなくゆっくり。

それを1分間、さらにできるように

なったら1分半。

それとストレッチ用のゴムバンドを

利用してもらいました。

このような生活習慣に取り入れた

運動と漢方薬の服用により、三ヶ月服用

した頃には、気象病の症状である痛み・浮腫み

は半減しました。

六ヶ月服用した頃では、7割程度軽減

しました。

現在は様子を見ながら服用して気象病の

症状を、コントロールできています。

 

漢方 コラージュ 代官山

漢方研究会 コラージュ

気象病

 

 

 

 

 

 

 

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